自動車配線入門パート２ ミルスペックなら何でも良いって訳では無い！

大好評だったと思い込みたい前回の「モータースポーツ配線って何？」から引き続きお送りします第二弾「モータースポーツハーネス構築時のセオリー」のこの辺りから今回は書こうと思います。

MILspecワイヤリングから独自発展したモータースポーツハーネス構築には実は絶対的なマニュアルや包括的なガイドラインの様な物は存在しません（私の知る限り）SNSなどで「どうやって作るの」といったコメントにたいして「とりあえずMILマニュアルを読んでから来い」と言う配線屋さんが多いですが1000ページほどあるので英語圏でもなかなか読む人はいないようです。

大きい意味でのモータースポーツ配線に明確な規定は無いのが現状ですが、電材によって作り方が変わって来る為、無知識のままだと異色な物が出来上がる可能性が高いです。

自動車配線の組み合わせとしては

ビニール電線　ビニールテープ

ビニール電線　コルゲルトチューブ

ビニール電線　ポリメッシュ

テフロン電線　ポリメッシュ

テフロン電線　収縮チューブ　

テフロン電線　ステンメッシュ、ファブリック、その他色々

こんな感じになります。くわしい方はテフロン電線、収縮チューブがスタンダードだとお気づきでしょうがカテゴリー、クラスによっては太ビニール線、ポリメッシュに産業系コネクターを組み合わせレースハーネスとして使っていたりする車もあります。スワップハーネスやワイヤータックハーネスにテフロン線、ポリメッシュやテフロン線、収縮チューブの組み合わせで販売されてたりもするので、詳しくないとぱっと見それと間違うかもしれません。

ただ「モータースポーツワイヤリングっていったらこれっ」て形に作にるにはやはりある程度決まった電材等のルール？に沿う必要があります。

「じぁあ何使えば良いのって？」話になるのでまずは電線について書いてみようかなと思います。
F1、WRC、モトGPなどトップカテゴリーを含め多くのモータースポーツの標準的な電線はraychem spec55を指す事が多く（55A、55Mと呼ばれてたりもします）これはMIL電線の22759/32~35番及び22759/41~44番を指すレイケム商品なのでspec55を買わない場合はmil番号で選択する事になります。それぞれにワイヤサイズ範囲があり絶縁体はＸＬＥＴＦＥ（テフロン系）で同じですがシングルウォールとダブルウォールの二種類、導体は錫メッキ銅線、銀メッキ銅線、ニッケルメッキ銅線、ニッケルメッキ高強度銅合金線、銀メッキ高強度銅合金線の5種類があります。

シングルウォールの錫メッキか銀メッキ、銀メッキ高強度のどれ使うかって感じになるのが普通かなと思うのですが使うカプラーで端子サイズが決まり、端子サイズでワイヤーサイズが決まりワイヤーサイズで使う電線が決まったりもするので車体、ECUや予算に合わせてといった感じになります。一般的に買えるミドルクラスECUカプラーの殆どは22、24AWG辺りが使える線径の限界なので通常は錫メッキ線のmil22759/32線を使います。予算が潤沢なら銀メッキ銅線も選択できます。　
トップカテゴリーマシンは26AWG以上も使うので銀メッキ高強度銅合金線のmil22759/33を使う事になるかと思います。24AWG以上を中心に組み立てる場合は通常とは別の電材、工具等も必要になります。

シングルウォール、ダブルウォールの違いは被覆の厚さで一回り配線径が変わります。分厚い方が摩擦等には強いですが収縮チューブ等で保護するので普通は薄い方を使います。シングルウォールのmil22759/32電線は12AWGより太い物がないので12awg以下は絶縁体が違うのダブルウォール（テフロン）のmil22759/16電線を使用します。

mil電線には上記以外にもかなり多くの種類があり、それぞれ材質や用途が違いますし、mil番号が付いていてもmilspecとは呼ばない物もあります。
MIL-W（spec）、MIL-STD、MIL-PRF、MIL-DTLといった用語に対してモータスポーツ配線でのmilspecはその中の一部の電材を指す言葉ですので間違ったMIL規格でハーネスを作る事が無い様にしなければいけません。

電線が流せる電流は定格温度で決まりモータースポーツ配線に使うmil電線は通常のビニール電線より許容温度が高い為、導体が同じ太さでも多くの電流がながせます。どの部品にどれだけの太さの線を使うかは配線の組み立て方によっても変わるので一概にはいえませんが、配線を束ね収縮チューブで纏める場合は配線の熱を逃がせなくなる為流せる電流が著しく少なくなるのでサイズ選択に注意が必要です。

つづく……予定です……（＿＿）