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エンジンオーバーホール作業、コンプリートエンジン製作工程、ハーネス製作、ECUセッティング、ダイノジェット製シャーシダイナモを使用してのパワーチェックなど日々の作業内容をご紹介していくブログです。

自動車配線入門パート3 ポイントを抑えた電材選択。

恐らく好評なのではないかなと良い方に予想する「モータースポーツ配線のセオリー」から続く第三弾………

前回モータースポーツ配線構築に使うMILSPEC電線について書きましたが、実際使う電線種類は他にもあります。ただ電線ばかりだと飽きてしまいそうなので今回は目先を変えて「モータースポーツ配線の外部被覆」あたりからアプローチをしようと思います。ある意味「これ」がハーネス制作時のメインだったりもします。åçã®èª¬æã¯ããã¾ããã

自動車配線に使う保護材料は前回軽く書いた通りですが、明確な規定や決まりが無い為使い方は自由です。ただある程度の「お約束」があるのも確かでそこら辺の塩梅を間違うと「なんか違う感」が漂います。
正解を知っていて外していくのと何も知らずに外してるのは出来上がりに差がでるのでオリジナルな作り方をするにしてもある程度の知識は必要かなと思うので参考になれば幸いです。

配線制作に熱収縮チューブを使う事は特に珍しい事ではないですが、モータースポーツ配線に使用するチューブは基本的には決まっています。

TEとヘラマンタイトンから出ている物が代表的ですが基本的にはDR-25と呼ばれる製品、又はこれの類似品を使用します。複数種類がありDR-25は高価格帯の製品ですが多くの場合これを使用します。

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「どこでも買える安いチューブと何が違うの?」って良くいわれますが、素材が違います。モータースポーツ配線構築に使用するチューブは通常エラストマーベースの物を使用します。簡単に言うと「ゴム系素材」となります。それに対し一般的に普及しているチューブの殆どは「プラスチック系素材」に区分されます(ちょっと乱暴な別け方ですが)

そして「ゴム系」の代表格がRaychem DR-25となります。レイケムは世界で初めて収縮チューブを作ったチューブ界のパイオニアでありラインナップの中でもDR-25はモータースポーツ配線構築時の「常識」と言って過言ではないほど多く使われています。åçã®èª¬æã¯ããã¾ããã

価格が安く入手しやすい「プラスチック系素材」のチューブを代用する事はほぼありません。ある程度偏見な物言いになりますが、普通に入手しやすいチューブの殆どはモータースポーツ用として使うには被膜の強度が低く、少し引っかけたりすると裂けたり傷がついたりします。正直「ビニールテープ&コルゲルト以上に保護材として有効か?」と言われると若干熱に強い程度でメリットを感じれません。

さてDR-25ですが3種類あり私が好きなイエローレターの通称「US」ホワイトレターの通称「UK」とホワイトレターのモータースポーツ用軽量モデルがあります。

「US」と「UK」の違いはプリント色だけですがUKのホワイトプリントはイエローとは違い目立たないプリントでアルコールで拭くと直ぐに文字を消せるので文字を全部消してパっと見DR-25に見えなくする上級テク?が使えます。雰囲気としては「US」の方がミーハー感はあります。

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自動車の場合配線の重量をあまり気にしない事も多く、軽量モデルは一部上位カテゴリーだけが使うと思うのですが、UK、USの二つは1/8までのラインナップに対し軽量モデルは3/32のサイズがある為「UK」を使う場合にそれだけ混ぜて使う事があります。
モータースポーツ配線制作を生業とする殆どの専門家は「UK」を選択する事が多いです。DR-25自体に方向性は持ってないのですが、イエローレターの「US」の場合文字の向きをある程度揃えないとなんか間違ってる感じで見た目が悪くなるので制作コストが同じの場合、時間が掛かる分損だからってのもあるとは思います。
それでも「US」モデルを使う有名処もいます。一般的には「UK」モデルが手に入りやすいので自分も一時「UK」で良いかなと思ったりもしましたが「US」で鮮やかに作られた巨匠達の作品を見て「USで行こう!」と現在にいたります。

 

DR-25含めモータースポーツ配線に使うチューブの特徴は圧倒的に分厚い被膜です。基本的に収縮率1/2ですが「こんなに?」って位の厚みになります。

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使い方としては一番厚みを確保出来る様サイズをチョイスします。例えていうとΦ5の電線にΦ6のチューブは使わずΦ10を使う形になりますが配線が中で遊ぶ場合はワンランク細くします。

最大限に保護被覆を有効に使う為のサイズ選択ですが、柔軟性のある「ゴム系素材」でもこの使い方をするとハーネス自体に柔軟性が無くなる為「電線を同心円で捻る」事で電線線自体の柔軟性を上げトレードオフを解消します。

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M22759のMIL配線内部の導体もテフロンの硬い被膜から柔軟性を確保する為に捻ってあります。

DR-25は「捻った電線」を使う事が推奨される製品です。許容温度が低いビニール線を「同心円で捻って」使うと必要な電流が流せなくなる為、許容温度が高い電線を組み合わせて使う必要が有り、結果MIL電線を使用している感じでもあります。

捻れないビニル電線を使用する場合やMIL電線でも捻らない場合はメッシュ系素材を使用します。代標的な物がポリメッシュです。捻らない分制作が簡単なので価格は結構安くなります。

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DR-25にビニール線等のストレート形状電線を捻らずに通すとカチカチに仕上がる為モータースポーツ配線の組み合わせとしては「それはない」って言う感じになります。

組み合わせは自由なのでそういう使い方をする場合もあるかもですがインスタグラムや人目に触れる所に何の説明も無く出すと「わかってない感」が結構出てしまうので注意が必要だったりします。

海外のハーネス屋さんで一部材料だけ同じ物を使い配線を捻らずDR-25を使った製品を安価に販売している所もありますが、彼らは「それ」をモータースポーツ配線としては扱わず「MILSPEC電材を使ったハーネス」や「〇〇ワイヤー」等適当な名称で販売していて「モータースポーツ配線が欲しい場合はメールくれ」って感じできちんと分けている所もあります。製品を「モータースポーツ配線」って呼ぶかどうかは自分次第って事なのですが、自身でけっこうな縛りをもっている所も多く感じます。

A-B間1メーターに60本の配線を通すとしてハーネスを「同心円で捻る」と「捻って無いハーネス」に比べ制作時間は数十倍に膨れ上がりますが、数十倍の請求が出来るわけも無いので結局の所好きじゃないと出来ないってのも「モータースポーツ配線」を名乗るハードルを上げている理由かなと思います。

さて今回2回目の「モータースポーツ配線のセオリー」なんとなく見えて来たんじゃないかなとも思います。「自由、自由って言っていっても全然自由ないじゃんって」感じですが、無駄を無くした機能パーツであるモータースポーツ配線に使用する材料にはすごく小さい物でもそれなり以上の理由があり、偉大な先人達が組み合わせを作り上げてきた配線構築方法を崩すのはそれなり以上の知識が必要です。

写真は同心円で捻られたMIL電線、それっぽく作られた柔軟性が無く直ぐに破れそうなハーネスと柔軟で破れないモータースポーツ配線。

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次回「まだまだあるお約束!」をお送りする予定です(__)

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